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Opinion(アンナミラーズは、どこへ行く?)

群雄割拠の時代に突入する飲食店業界の中で、何だかんだ言いつつもアンナミラーズの今後を心配する、片桐紀長による檄文(げきぶん)を再録します。


Dec.27.2006(WE)―アンナミラーズは復活できるのか?

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_噂が本当になる日が来るのか…/パイ工場は既に移転済みだが

 井村屋製菓は現在策定中の2008年3月期からの3カ年計画で、外食事業の立て直しを打ち出す。首都圏で展開するパイを中心とした米国風レストラン「アンナミラーズ」を中部、関西などに3年以内に再出店する。これに伴いパイやケーキなどの調理センターを東京都内から津市の本社工場内に移転する。

_ 経堂のカミサリー撤退という話は以前から出ていたので、想定の範囲内ではあった。しかし、パイ工場移転に合わせて中部・関西へ出店するという噂は以前にも耳にしたことがあったのだが、まさか本気でやるとは思わなかった。
(追記)パイ工場移転自体は11月に発表されており、既に完了している模様。実際には数ヶ月前から高茶屋で稼働していたはずなのだが、公式発表がされるまではオフレコ扱いだった可能性もある

_中部・関西で受け入れられるか?
現在のアンナミラーズのメニューは、通常のファミレスより上の価格帯を行っているわけだが、そのままで中部・関西で受け入れられるとは予想しがたい。おそらくは、当該地区の水準に合わせた価格設定にするだろうと思われる。
別価格設定自体は船橋ららぽーと店(2005.7-9期間限定営業、#53)での実績もあるので、難しくはないだろう。

_ しかし、中部・関西での顧客要求水準は、ある意味首都圏以上にシビアであるとも聞いている。(例えば、「東京では3年保つ店が、関西では1年がやっとだ」等)
これまでにも再三指摘してきたが、QSCAの徹底した見直しは不可欠ではなかろうか。

_赤字の原因は?

 井村屋の外食事業は、アンナミラーズと仏菓子店「ジュヴォー」の2業態をチェーン展開している。06年3月期の事業売上高は前の期比19%減の12億円、営業損益は2億円の赤字だった。07年3月期も営業赤字が続く見込みだ。

_ これについても以前言及した。ジュヴォーは、当初予定していたカフェ/ブティック形態での展開を断念したようで、いわゆる「デパチカ」形態での出店に特化していくように思われる。目黒の喫茶コーナー廃止も、国内生産となっているプチガトー等の増産に伴うアトリエ拡張ということであったらしい。しかし、知名度がそれほど高くない状況に変わりはないようであり、売上が急増するとも考えがたい。
決算報告書を読めば分かるが、アンナミラーズ撤退に伴う除却費用自体も無視できない額になっているので(追記:自由が丘及びオペラシティの退店で4300万円の除却損となっている模様)、店舗整理が一段落ついた来年度については改善される可能性もあるが、果たしてどうなるか。

_「黒字」は果たして本物か?

 主力業態のアンナミラーズはファミリーレストランの草分け的存在として知られるが、競争が激化し近年は店舗閉鎖が続いていた。店舗数は最盛期の22店舗から、3店舗まで減少している。ただ残る3店舗はいずれも黒字を確保しており、井村屋では「リストラは一段落した」(浅田剛夫社長)と判断。

_ 店舗ベースでの収益状況は部分的にしか公表されていないので判断できかねるが、赤坂店は24時間営業中止・営業時間短縮などを行ってきており、順調とは思われないのだが。同店ではテレビ番組収録が行われることも何度かあるのと、多分に、「赤坂」というネームバリュー(?)を残したい為に存続させているのではなかろうかとも思われるのだが、真相は不明。
高輪・ランドマークについては一応順調ということのようだが、いずれも近年に改装を行った店であるし、立地条件に集客力を依存しているという事実を忘れてはならない。実際、両店とも一時期は人の流れが変わってしまい、伸び悩んだ時期があったようだ。
ランドマークでは、ちょうど真向かいに「コールド・ストーン・クリーマリー」が出店し、アンナミラーズが空いている冬の平日でさえ、行列が絶えることがない。同店のWebサイトでも「選んで、見て、おいしさを楽しむ。ただアイスクリームを買いに来ていただくだけではない」と謳っている。アンナミラーズに例のパフォーマンスを真似しろとかいうつもりはもちろん無い。しかし、誰でも、食べること「だけ」の為に外食を使うわけではない…ということにも、思いをめぐらせていただきたい。

_ 名古屋地区であれば、日本経営品質賞を受賞しているロッソえびすやもある。同店に勝るとも劣らないものを提供できるのであれば、アンナミラーズの復活も本物と言えるとは思うが…果たして。


Dec.29.2006(FR)―「アンナミラーズは復活できるのか?」追記

_ それにしても、「高茶屋にカミサリー移転(正しくは「フードサービスファクトリー」と呼ぶらしい)」とか「名阪にアンミラ出店」とかって、まさかやるわけがないだろうな…と予想していたことばかりだったので、もうアンナミラーズは減ることはあっても増えることはないと書いたわけなのだが、本当にやっちゃうとはなぁ…。最初から疑ってかかった俺が悪かった(何

_ もちろん、現時点で会社からの公式発表はされていない。しかし、この時期に情報が出てきたということは、中間決算に合わせて何らかの取材が行われた結果とも思われる(記事でも、社長のコメントが出ている)。正式に決定されたものではないとしても、社内で何らかの検討が行われていることは事実だろう。

_ そこで注目したいのが、井村屋製菓、山川社長(当時)へのインタビュー記事であるエコ自慢(2002年3月8日)。

 そして直接お客様に商品を販売する業態をレストランに求めたわけです。レストランはお客様と直接接するというサービス業で、そこでいろいろなお客様の顔を見たり、ご意見を聞いたりして流通の部門に少しでも参考になればといったこともあり新しいレストランという業態にチャレンジしました。
 このレストランは、首都圏で「アンナミラーズ」という名前で14店出店しています。アップルパイとかチーズケーキとかチョコレートパイ、そういうパイとコーヒーというコーヒーショップです。学生時代を東京で過ごされ飲食していただいた人から手紙などをいただき、名古屋や大阪にも店を出してくれというお話をいただくのですが、すぐには出せないので「アンナミラーズ」のホームページの通販でお届けするようなことをしています。

(強調部は引用者)

以前にこの記事を読んだときは、リップサービスくらいに思っていたのだが、今回の日経の記事での趣旨と符合しているのは偶然ではないだろう。

_ そのように考えると、フードサービスカンパニーにわざわざ社外出身の執行役員を送り込み、不採算店舗の整理等でハードランディングを目指してきたというのも、説明が付く。現社長の浅田剛夫氏はアンナミラーズの立ち上げに携わっており、そこを敢えて社外出身者に任せることで、フードサービス事業の縮小均衡を目指すのだ…と片桐は解釈していた。しかし、最初から名阪地区への出店を想定していたとなれば、逆に経堂カミサリーの存在が足かせになる。また、社内随一の(?)不採算部門が敢えて拡張策を目指すとなれば、財務改善は至上命題であろう。

_ 今会計年度の上半期においても、フードサービス事業の売上高は前年同期比65.6%(4億6600万円、うちジュヴォーが9100万円(前年同期比165.5%))、営業損失は1億1100万円(前年同期は1億300万円の損失)となっており、まだ予断を許せない。しかし、来年度においてそれなりの収支に持ち込むことができれば、「噂が現実になる」日も来るのかもしれない。

_ そんなわけで、予想してもどうせ外れるとは思うけど(汗;)、可能性としては60%くらいって感じでしょうか。



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